the 雑念

葉一用。とりあえず日記

5/14 僕「多幸剤ってどれくらい効くのか試してみたいよね」同期「マッドサイエンティストかよ」僕「普段から幸せならあんまり効果ない訳でしょ?相対的に現在の不幸をどれくらい感じているのか測定できる」同期「マッドサイエンティストかよ……」

【椅子について】

椅子がとうとう我が家にいらっしゃった。組み立てるのに苦慮したが、素晴らしい座り心地である。ああ、なんて素晴らしい家具なんだ、と私は嘆息したのである。床が多少傷付くことなど瑣末な問題に過ぎないのである。社宅だし。敷金払って出て行くし。机、椅子、箪笥が揃った居間は居間と呼ぶにはあまりに雑多な状態である。しかしながら椅子に腰掛けロッキング機能を最大にすればそんなことはどうでも良い。そのまま現実に目を閉ざして眠りにつくのも容易いのである。こうしてまた一つ私を駄目にする家具を購入したのだが、次はエアコン、君に決めたという感じだ。

【同期について】

同期はかけがえのないものだ、というような言説が跋扈している。そもそも人間とは誰しも代替不可能なものなのではないだろうか、という疑問はさておいて、とにかくそういうものらしい。同期、と言っても年齢がまちまちなので私のような院卒・24歳というのはレアリティが高い。高卒・18歳も(職種は違うが)いるし、36歳くらいの人もいる。話す。そして世界観がそれぞれ異なることを知り、それに一々驚く毎日が続く。

先日、私よりも年下の同期(仮にa氏とする)がもじもじと私の近くに寄って来たので、どうしました?と声をかけたのである。彼とは職種は異なるが居室が近かったのでそれなりに顔見知りではあった。

「あの、さっきの講義なんですけど」

「はい」

「先生の言っていた、≪妥当≫ってなんですか?」

私は数瞬頭を働かせ、a氏の発言を吟味した。先ほどの講師は「……であるからして、b説を採用する方が≪妥当≫である。というのも……」というような言い回しで何かしらを説明していたような気がする。彼はおそらく、このポイントを私に聞いているのだろうと推量した。彼は≪妥当≫の意味を知らず、前述の結論を押さえられないまま、次項の内容説明へ移られてしまい、混沌の中講義が終わってしまったのだろう。そうして、途方に暮れて現在に至った。そういえば、彼は前回のテストでやらかしてしまったのではなかろうか。再度記憶を探り、その前日、補講に出かける彼の姿を目撃したのを思い出す。確かにそれはa氏であった。

「適当、ということなのでは」

「テキトー?どうでもいいって感じですか?」

「ああ、いや、ちょっと言葉が悪かったかもしれません……適切、とか」

「適切」

「まあ、もうざっくり言って≪良い≫くらいで良いんじゃないですか。≪妥当≫を≪良い≫に変えてもそれほど困らないのではないかと思います」

「あー、良いってことなんすね」

a氏はお礼を言って去っていった。私はこれで良かったのかなということと、妥当という単語が分からないまま講義を聞いていた彼の胸の内に思いを馳せた訳である。同期だからなのか、割と心配なところだ。これも「かけがえのない」というニュアンスに近しいものがあり、前述の言説を支持するようでなんだか気にくわない。まあでも、やはりまた赤点を取ってしまうのは、かわいそうなように思うのである。次何か聞かれたらちゃんと教えてあげよう、そんな風に思うのであった。